羅臼岳から北方領土を望む

6月10日、残雪期の羅臼岳に登ってきました。知床国立公園・世界自然遺産の知床半島にある羅臼岳は、知床連山の最高峰で標高1,661m。頂上からは知床半島とその両側に広がるオホーツク海と太平洋を見降ろせます。羅臼町の沖には国後島の山並みをはっきりと確認できます。
山開き前の羅臼岳はまだまだ残雪が多く大沢は大雪渓になっています。特に銀冷水付近の登山道は残雪で隠れているのでGPSで確認しながら進みました。
知床はヒグマの生息地です。過去3回、羅臼岳とその周辺でヒグマと遭遇しています。今回の登山でもヒグマの気配が感じられました。会わないような対策と、出会った場合の対処法を学んでから登山しましょう。
2017年の羅臼岳山開きは7月2日の予定です。


羅臼岳の登山口は岩尾別温泉ルートと羅臼温泉ルートがあります。今回は岩尾別温泉ルートのピストン。
標高差1,400m、往復13km、標準タイムは登り5時間30分、下り4時間程度の日帰り登山としては長い距離です。


登山口の岩尾別温泉はまだ営業前でした。登山者はホテルの駐車場には車を止めることはできません。普段は道路脇に駐車しています。広々とした駐車場にポツンと一台。本日最初の入山者です。


トイレも閉まっています。山開きまでは使用できないようです。


ホテル横の脇道を2分程歩くと山小屋が見えてきます。


木下小屋。昭和初期に知床の登山道を切り開いた木下弥三吉さんから由来しています。


ここのトイレは使用出来ました。


この日一番目の入山者です。


知床原生林の中へ入山。


最初の樹林帯は大量のやぶ蚊がまとわりつく。


登山道脇に咲く白い花。


紫の花も咲いていた。


オホーツク展望台。ここまで顔面4ヶ所と腕も数カ所刺される。


オホーツク展望台からどんよりとしたオホーツク海が展望できた。


のんびり歩いていると登山道に新鮮なヒグマのウンチ。出来たてですね。ここからは緊張感を持って歩きます。


天頂山も見えてきました。


650m岩峰。まだまだ半分も来ていません。


硫黄山の姿も確認できた。


雪解け時期に咲くエゾエンゴサク。


弥三吉水。


きれいな水場で美味しいという話も聞きますが、飲んだことはありません。ここは湧水なのでエキノコックスの心配はないという説もありますが、北海道の山の水は飲めない!という掟を守っています。


残雪の登山道脇にまたしても新鮮なヒグマのウンチ。周りの木の枝でお尻を拭いた跡もあります。鈴を控えめに鳴らし、時々手を叩き声を出して人間がいることをクマに知らせます。

熊鈴もいろいろな考え方があると思いますが、自分はなるべく控えめに鳴らしています。
過去の出来事ですが、耳をつんざくような鈴を鳴らしているご婦人2名が前を歩いていて、鈴の音に負けないように大声で会話していました。

後ろから声を掛けてもまったく気づきません。仕方なく横から追い抜くと相当ビックリしたらしく飛び上がって文句を言われました。一応は驚かせてスミマセンと言いましたけど。


あんなにうるさいとクマも嫌がってご婦人達には近づかないでしょう。だけど周りの音が何も聞こえていないのは危険です。ヒグマが歩くと小さな木の枝がパキパキと鳴ったり、音で感じ取れる気配もあります。鈴を鳴らさない登山ガイドの方もいます。

考え方は人それぞれなので、安全だと思う方法をご自身で判断してヒグマ対策をしてください。
ヒグマの対処法は知床財団のホームページに詳しく掲載されています。知床の山へ登る時は予備知識を付けてから行きましょう。
[blogcard url=”http://www.shiretoko.or.jp/library/bear/”]


極楽平に到着。距離的に約半分くらい。


樹林帯は過ぎて背の低いダケカンバやナナカマドが多くなってきます。


コゴミが生っていました。


仙人坂。この辺りから登山道が不明瞭になります。


極楽平を振り返るとオホーツク海が眼下に広がります。


銀冷水に建物が出来ていました。トイレかな。ここから大沢まで登山道が残雪で埋まっています。GPS機器または地図読みが出来ないと道迷いの恐れがあります。


大沢は大雪渓です。


新しいヒグマの足跡、15cmはありました。雪渓を下って行ったみたいです。


先行者の方は数十分前にこの雪渓ですれ違ったらしく熊撃退スプレーを構えたそう。何事も無く話されていましたが、対処法を知っているから出来たことです。そこで慌てて走ったりクマを刺激したら大変なことになるでしょう。自分も冷静に対処できるか不安ですが…


大雪渓の途中で振り返る。かなり登ったけどまだまだ先は長い。


あの急登を超えると羅臼平までもう少し。ツボ足で登ったけど慣れない方はアイゼンがあると安心です。


見えた!羅臼岳。雪渓の形がキャラクターっぽくなっている。


キバナシャクナゲが咲いている。


羅臼平に到着。


ミネズオウもこれからが見頃。


ヒグマ対策のフードロッカー。人間の食べ物の味をクマに教えない作戦。知床の山は荷物をデポする時やテン泊の時も、食べ物を野外に置くことはNGです。一度人間の食べ物を味わったクマは危険なので駆除されてしまいます。
知床ではヒグマの姿を撮影するために食べ物や弁当をバラまく輩もいました。そのようなカメラマンと一緒にされたくないのでヒグマ待ちの撮影はしていません。


北方領土国後島の山並みが間近に見えます。


頂上まで0.6kmの場所にある岩清水。


岩から水が滴っています。水筒に入れて飲んでる方もいますので飲料としても大丈夫だと思いますが飲んだことはありません。


ここから頂上までは岩稜地帯が続く。三ツ峰方面を振り返る。


岩場にはコケモモが咲いていました。


小さな白い雲がかなりのスピードで流れたと思ったら…


ものすごい勢いで雲が湧いてきます。


頂上標識が見えた。強風で立ち上がれない。


岩にしがみつきながら何とか登頂。


国後島にも形のいい山がありますね。


三ツ峰、硫黄山方面。


天頂山方面にも雲が湧いてきます。


一瞬で雲海が広がりました。


下山はほとんど視界がなく極楽平手前でやっと雲の下に出ました。


羅臼岳頂上はまだ雲が流れてる。


下山はゆっくりと原生林を楽しみました。


スタート直後の樹林帯で蚊に顔面4ヶ所と腕も刺されました。直ぐにカユくなったのでブヨではないと思います。ムヒパッチをペタペタ貼ってカユミのストレスはなかったので助けられました。救急セットに入れていた自分を褒めたい。

羅臼岳は標高1,661mの決して高い山ではありませんが、知床半島の厳しい自然環境にそびえる山です。両側に海を抱えウトロ側と羅臼側では天候が違うこともあり、特に山頂付近の天候の変化には気を付けましょう。距離も長く携帯電話もほぼ圏外です。本州の3,000m級の覚悟で計画を立てることをおすすめします。